Go for Broke ! ゴー・フォー・ブローク 日系二世たちの戦場

 本の紹介 

*ゴー・フォー・ブローク 日系二世兵士たちの戦場
1885年から10年間、日本人がアメリカ本土へ集団移民する事業が始まった。
移民する日本人は「市民権」「土地の所有」「白人との結婚」を禁じるという差別と
偏見の中で過酷な労働と生活を送った。その日本人移民の子どもたち「アメリカで
生まれ育った日本人二世」はアメリカ国籍を持つことができたが、公共施設の使用
の制限、就職や雇用面での差別は存在し続けた。

1941年、日本軍がハワイ準州の真珠湾を攻撃した時から、アメリカ日系人社会に
対する猜疑心が広がり敵性外国人として認識され、アメリカ在住の日系人12万人の
「強制収容政策」が実行された。収容された人々の三分の二(約67%)は、
アメリカで生まれ育ったアメリカ国籍の日系人とその子どもたちだった。

強制収容政策と同時に執行された法律がある。
アメリカ在住の日本人とアメリカ国籍を持つ日系二世の「財産放棄と売却の強制」
「銀行口座の凍結」が強制執行された。
この日系アメリカ人への経済的弾圧により、1885年から始まった移民事業で
アメリカへ渡り働き、そして築き上げた「家屋、広大な農地、蓄えてきた預貯金」は
事実上アメリカ合衆国に没収された状態となった。
家屋や農地は持ち主の日系人が居なくなったことで荒廃し、ほぼすべての不動産は
不当な手段で、他のアメリカ人に横取りされてしまった。
付け加えるとアメリカ人は「強制収容所」とは言わない「再配置収容所」と言う、
「移住センター」とも言う、全財産を没収し収容所に強制的に送り込んだのに、
国家はロジックで実態を隠す。

戦時中の話は続きます。
世界大戦時に、ハワイ準州とアメリカ本土各地の日系人強制収容所から18歳~30歳
の青年が志願兵として応募し集められた。
その日本人志願兵だけの陸軍歩兵部隊「442連隊戦闘部隊」がアメリカ本土で編成
された。
1863年アメリカ合衆国有色軍(アフリカ系・他)が設立されて以来、約80年ぶりで
一つ人種で構成された部隊の創設だが、この1940年代に「イギリス系」「ユダヤ系」
「オランダ系」「ドイツ系」「イタリア系」「スペイン系」「ヒスパニック系」
「ロシア系」「チャイニーズ系」「コリアン系」という同じ民族で編成された
アメリカ陸軍部隊は作られていない。日本人系(日系)の陸軍部隊がだけが設立
されたのだ。
ヨーロッパ戦線でアメリカは「ドイツ軍」と激しい戦闘を繰り広げていたのだが、
最前戦に投入するにあたり「アメリカ政府は白人の銃弾の盾に日系人を使ったと誤解
されたくない」と、ある記述にはあるが黄色人種の日系人は「信用できないアメリカ
人」として軍部に取り扱われていたのではないかと推察してしまう。
日系人部隊の死傷率があまりにも突出している資料を見た時、「良きアメリカ人」
であることを証明しようと志願兵として戦った、日系人の男たちの覚悟を見事に
証明した事実を刻み込んだ。
だが、その覚悟をアメリカの市民・国民はしっかり受け止めたのか・・・?
日系人に対するアメリカ合衆国の戦後の対応は、大きな疑問が残る扱いだった。
こんな歴史の事実があることを、死んで行った男たちの物語があることを
あなたは知っていましたか。

(補足)
*日系部隊「442連隊戦闘部隊」「第100歩兵大隊」被害
・ヨーロッパ戦線死傷率:60%
・延べ死傷率:314%
・延べ死傷者数:9486人

*第100大隊の合言葉
・「Remember Pearl Harbor (リメンバー・パール・ハーバー)」
 真珠湾を忘れるな
*第442連隊戦闘部隊の合言葉
・「Go For Broke ! (ゴー・フォー・ブローク)」
 日本語訳では「当たって砕けろ」「撃ちてし止まん」
 「撃ちてし止まん(うちてしやまん)」→「敵を撃破するまで戦いをやめない」
 強い決意を表す言葉。(古事記に由来する表現)

今から90年前。アジア人差別、いや違う日本人差別に真正面から対峙した男たち。
今を生きるアジア系アメリカ人、今を生きるヨーロッパ系アメリカ人、
今を生きる日本人へ。
仲間として生きていきたいと思った、日系アメリカ人の男たちの覚悟を、
「私はアメリカ人である」という主張を「死」という結果で示そうと若くして
勇敢に死んで行った男たちの生きざまを知ってほしい


(目次)
 序章:日系二世は、なぜ 戦場を選んだのか。
第01章:イタリアへの旅 ミラノにて
第02章:日系二世部隊生まれる(アメリカ)
第03章:試される忠誠心(イタリア)
第04章:吹雪に死す(イタリア)
第05章:認められた戦闘能力(イタリア)
第06章:戦友との邂逅(イタリア)
第07章:ローヌ平原をゆく(フランス)
第08章:自由と平和の使者(フランス)
第09章:日系二世は消耗品か(フランス)
第10章:黒人兵は何処に(イタリア)
第11章:ムネモリ上等兵のブロンズ像(イタリア)
第12章:ダッハウ強制収容所(ドイツ)
 終章:戦場の声がきこえる(アメリカ)
・戦後、アメリカ国内でのもう一つの戦い
・日系二世による戦争体験の伝承と教育


「日本人として 恥ずかしくないように、
 あなたの国 アメリカのために戦いなさい。」

書名:ゴー・フォー・ブローク!
著者:渡辺正清(わたなべ まさきよ)
出版:株式会社 光人社
発行:2003年05月31日 発行
定価:1900円+税
*四六判 248ページ 厚さ2センチの紙の本です。 

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arigatou sayounara    2025/09/29

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